交流の場としての見本市の魅力と意義
2021.6
大正浪漫硝子 / 廣田硝子株式会社(JAPAN STYLE出展者)
江戸時代から職人が集う東京墨田区に明治32年(1899年)に創業した歴史ある硝子食器メーカー。乳白色の模様を浮かび上がらせる「あぶり出し技法」によって生み出された「大正浪漫硝子」は、大正時代に流行したクラシックグラスの金型から復興させた40年以上続く人気シリーズ。創業より伝わるデザイン資料を元に、江戸切子や吹き硝子などの伝統製造を継承しつつ、 現代のインテリアに調和する商品づくりを手掛けている。
また、硝子の歴史や文化を後世に伝えるため、2004年に江戸切子の製作工程が学べる「すみだ江戸切子館」、2018年に日本のガラス食器の成り立ちなどが学べる「すみだ和ガラス館」などの体験型施設を開設した。
廣田硝子
Q. 見本市への出展を決めた理由は?
ドイツ・フランクフルトの国際消費財見本市「アンビエンテ」に出展していた取引先から紹介され、姉妹見本市である「インテリア ライフスタイル」に2008年、初出展しました。実は別の見本市には以前から出展していましたが、毛色の違う出展ブースが隣接するなどして雑多な印象を受けていました。しかし、「インテリア ライフスタイル」は全体的に統一感があり、製品やスタイルに合わせた会場レイアウトだったので、見本市のイメージが一新されたことを覚えています。
本来、ガラス業界の発表は2月頃が望ましいので開催時期はベストではないのですが、それでも効率よく多岐にわたる業界人と出会うことができる交流の場として魅力を感じています。
Q. 初出展されていかがでしたか?
新規顧客でも既存でも、直接顔を合わせて話ができる醍醐味は見本市ならではだと感じています。もちろん新規開拓でビジネスを拡大させていくことは大事なのですが、一方で情報交換の場でもあるということも非常に大きな意味があると思っています。
初出展からしばらくして、異素材である陶磁器の会社ユープロダクツさん、漆器の会社我戸幹男商店さんと水島産業さんと4社で隣り合って出展をするようになりました。それぞれ出身地も扱う素材も違うため、4社が揃うのは「インテリア ライフスタイル」だけです。お互い顧客を紹介したり、地場だけでは耳に入らない情報を交換したりもしますが、ここで一年の成果を発表するという同じ目標を持つことで、お互いを高め合っているのではないかと思っています。
また、最近は新型コロナウイルスの影響で見本市へ出展を見つめ直す機会にもなりましたが、やはりオンラインだけで全てが賄えるものではないと感じています。素材や感触にこだわった製品の良さを写真や言葉だけで伝えられるとは思わないですし、それで満足してしまったらものづくりに携わる企業としての存在価値が薄れてしまいます。リアルだからこそ、今まで以上に「伝えること」の意義を深く考えていかなくてはと思うようになりました。
Q. 今後の展望は?
世界的にもサスティナブルが浸透しつつありますが、廣田硝子でも「ガラスストロー」を販売しています。実は1970年代までガラスストローは日常的に使われていたので、これも復興になるのでしょうか。唇にフィットしやすいよう飲み口をラッパ状に加工するなど、職人の手による生産方法は今も変わりません。また、テーブルウエア以外にも「江戸切子板」など建築資材として使える商品開発も進めていて、異業種へのチャレンジも続けていくつもりです。
日本人が日常的にガラス食器を使うようになってから100年余り、まだまだ和ガラスは普及しきれていないと思っています。手間ひまをかけた昔ながらの製法を大切に守り続けながら、廣田硝子にしかできない世界観やものづくりを続けていくことで、和ガラスの良さをより多くの方へ伝えていきたいです。