感覚をととのえる、アートとテクノロジーの交差点
2025.10
VITRO(TALENTS出展者)東京・渋谷を拠点とする「VITRO」は、高橋良爾が大学時代にデザインとエンジニアリングを融合した実験的なプロダクト開発を目的に立ち上げたクリエイティブファーム。クライアントやパートナーとともに、デザインやアート、テクノロジー、コピーライティングなど異なるバックグラウンドを混ぜ合わせながら「実験と発見」をコンセプトにプロダクトやサービスを企画、開発、ブランディング、クラウドファンディングまで並走。「インテリア ライフスタイル2025」では、Young Designer Award 2025を受賞。 |
―Young Designer Award 2025の受賞、おめでとうございます。まずは受賞作品についてお聞かせください。今回の作品はどのようなコンセプトで制作されたのでしょうか。
今回出展した《DEW》と《SHIZUKU》は、LEDと水を組み合わせた“ぼーっとする”ための照明作品です。《DEW》は線香花火をモチーフにした照明で、盆の中に水を入れると小型ポンプで汲み上げられ、ゆっくりと水を循環させる仕組みを取り入れました。調光や水の動きのスピードはタッチセンサーで調整できるようになっています。その後、砂時計型の照明《SHIZUKU》を開発しました。こちらは水の入れ替えが不要なタイプです。
それぞれマインドフルネスや健康への効果を期待していて、心を落ち着かせるアイテムとして、ホテルやバーなどの空間演出にも活用できると考えています。
―この照明を発想されたきっかけを教えてください。
ミラノで展示会に出展する機会が多く、彫刻的で存在感のあるインテリアが好まれるミラノのデザイン傾向を見て、日本人としてどうアプローチできるかを模索していました。そこで、テクノロジーとデザインを掛け合わせた表現を探り続けこの照明のアイデアにたどり着いたんです。実験を繰り返すうちに、棒状のLEDから、より水面の光のゆらぎや美しさを感じられるような線香花火型や水時計型といった形状に展開していきました。
―線香花火と水というのは、少し意外な組み合わせのようにも感じますね。
線香花火のフォルムをイメージしながらも、日本の伝統的な仕掛けである「ししおどし」や「水琴窟」などの要素も意識しています。この照明を眺めていると、多くの方が「ずっと見ていられる」とおっしゃるんです。焚き火を見ている時のような、無心になれる感覚に近いのかもしれません。
―今回の「インテリア ライフスタイル」展に出展された目的についても教えてください。
来場者と直接コミュニケーションをとることで、健康経営に関心のある企業やバイヤーとの接点を持ちたかったからです。特に、百貨店のバイヤーやアート系インテリアショップからの反響が大きかった印象があります。
私は基本的に一人で制作しているため、営業や販促まで手が回らないのが現状です。今後の活動方針を考えていたタイミングでもあり、今回の出展を通して作品の購入や、デザイン依頼などを検討していただける方と繋がりたいという思いがありました。
―今後の活動については、どのような展望を描いていらっしゃいますか?
美大生などアートに軸足を置く若い世代が、作品を商品化するプロセスの発信にも取り組みたいと考えています。才能があるのに、経済的な理由で諦めざるを得ない人が多い現状を見て、何かしらのサポートが必要だと感じています。作品だけでは収入につながりにくいからこそ、商品化を通じて新しい収益の形を提案したいです。
―来年2月のアンビエンテでは、どのような展示を予定されていますか?
以前展示した砂時計型の作品をはじめ、「ポータブルネイチャー」、持ち運べる自然というコンセプトに基づいた作品の展示を検討しています。現在のプロトタイプをさらに改良し、構造面を強化したうえで、より完成度の高いかたちでお披露目したいと考えています。